大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和28年(く)26号 決定 1953年11月11日

申立人 岩田与衛治

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件申立の理由は、記録に編綴の申立人名義の抗告状に記載のとおりである。

按ずるに、一件記録に徴すれば、申立人は刑事訴訟法第二百六十二条第一項の請求を盛岡地方裁判所にしたところ、同裁判所は昭和二十八年十月十五日右の請求は理由のないものとして同法第二百六十六条第一号に基き申立人の請求を棄却する旨の決定をなし、右決定謄本は同年十月二十日右申立人に到達したことが明かである。しかるところ、右刑事訴訟法第二百六十六条第一号に基き請求を棄却する決定は同法第四百二十条第一項にいわゆる「訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたるものというべく、しかして右同法第二百六十六条第一号の決定に対しては、同法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がないから、同法第四百三十三条の特別抗告の許される場合を除いては不服を申立てることができないものと解すべきである。なお、同法第二百六十九条によれば同法第二百六十六条第一号の請求棄却の決定をするとき手続費用がある場合は決定で申立人に負担せしめることができこの決定についてのみ即時抗告できることになつていることから考えても、右同法第二百六十六条第一号の決定自体については不服の申立ができないものであることが窺える。

以上の次第で、本件抗告は法律上許されないものであるから、同法第四百二十六条第一項に則りこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 板垣市太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 細野幸雄)

抗告申立理由

「右田沢文雄、佐々木隆造は職権濫用として告訴をされたのではなく又僞証罪は審判請求の対象とは為し得ない依而棄却する」とあり、

一、昭和二十八年五月四日とあるも抗告人の欄には二十八年四月七日とあり且又刑法第一九三条涜職罪云々とあり正しく職権濫用の告訴をして居ります。

二、右告訴はないとすれば更に告訴します。別紙送付審判請求の申立は補正します。別紙送付。

三、証拠物写及採用の方法は説明書の通り。

抗告状に附属する追申陳述

第一原裁判所刑事部の決定判決は職権濫用の告訴の事実なし棄却するとある然らば前の告訴状は所在不明なり止むを得ず写を書いて提出しました然らば棄却でなく却下な筈です。然し法律には棄却とあり是れは審判は本案に及んだ時の事で本案にはいらない手続上の欠点を採りて蹴飛したのである。勿論当方は専門家でなく素人である。但し私親子は被害者である刑事は原告官であり被害者を救うのが目的である。此の様な例とするならば盜害に罹つたものは原告としての立証に立つものでない。被害者の申報を信じて捜査するので今迄の処は虚の被害報告はないと聞く、然るに本件の如きは不動産の登記簿上の移転関係で経過は甚だ明瞭である。彼様な次第にも不拘証拠はないとして不起訴処分をして理由も附せず通知あり、依而検事正殿に理由を示すべき事を請求したるも返事もない。私は法律に基いて補正するべきだと思う。彼様な事実である一方又審査局の方は告訴状の所在さい判らない、必ずある。土沢の部長を経て出した故に再び御調べ下さるものと思い呼出しを願いたいと抗告状に符箋して置いたが今以て何の音もないが抗告状は貴裁判所へ廻つて居るでしよう。

第二被害の申報と成り居るものは近い部ではない判決書明示の通り訴状以来の事で争点の中にあり、前陳の通り数年間屡屡の申立は行政官無効確認として争訟中原告の適格喪失の結果良寿となり同時に被告知事の買収権も所有権も何もないことになり、然らば買収は無効なり。係員の行動及事務関係は総而無効にして形蹟の残りたるものは一切は無効なのです。加之買収手続中にも欠格委員の参加及手続上の欠点も行政官も登記官も何れより押すも一切は無効にして何も成して居りません。所謂良寿は調整上の公法上の対象者でありません。

第三右の次第なのにも不拘被告訴人等は何んの彼のと言募りて言を左右にするけれども悉く無効である。即ち茲に於て職権濫用が始るのです、義務なきものを強いて強奪したのです、即ち此事を篤信して判決の意義を精読すれば自ら判るのです。然るに係官諸公は案丈を読んで意義を読まない、手続を以て蹴飛して本案の意義を無視し告訴人及良寿等の権利其他を侵害して出鱈目の決定判決をするとは以ての外なり。由来訴求の方法は多少の誤りは補正するのですから先づ補正を催すべきです。手続に欠点あるを幸に蹴飛するのであれば役人とは言えない、国民保護の責任者はない、殊に民事と異り関渉にもならない却而民事よりも関渉的とは如何と思はれる、能く能く考えられたい。手続が悪しければ犯人は皆免れて恥を知らない豈に恐るべきは国造である。

第四私には何の通知もないが急度貴裁判所に回つて居ると思う彼様な事件は上告の趣旨に倣、再び盛岡で調査すべきである。而し決定を言渡し不起訴を相当としたれば最早当裁判所検事局には管轄権なしとの考でしようか凡ては其任務を怠つて本案の審判をせず上級に送るとは如何と思います。

第五本来刑事事件は真実発見主義にして其形式は要式行為にあらず、犯行防再主義ですから犯行の事実申報があれば誰れでも捜査に着手するのは当然と思います。それ告訴状はないとか証拠はないとかして蹴飛しては被害国民は困ります。恰も民事の原告立証主義と異います。民事に於ける原告としては悉く立証は建て認否を遂げたものですが判決判示の脱漏の為め上告中なのですから記録は東京の記録になんでもあります。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例